野梨原花南 マルタ・サギーは探偵ですか? 5

現実世界に戻った丸太がオスタス(だったか)に戻るために探偵になったお話。現実世界では25歳になった丸太は将来の可能性を検討もしないで戻ることを優先します。ことの是非はともかく、7年もの間思い続ける思いの強さを感じます。丸太の現実での環境と、オスタスでの環境の違いを考えると戻りたくなるのもわかるのですが、それにしても全く違う世界の話で、それが事実かどうかを支えるのは自分の記憶のみなのに7年間も思いをその強さで維持できることが凄い。
たとえば、誰か好きな人がいるとしてその人のことを何年間も、何十年間も思い続けることは簡単ではないけれどそれほど難しいことではありません。でも、世界が異なるのにできるかと言うと自信はありません。ピーターパンのことを思い続けることはできないのでしょう。これは物語だからいいとして、実際に「今認識しているこの世界」と異なる世界から来たと言われてもその言葉を信じられるかと言うと、難しい。もしかしたら本当かもしれないけど、心の底から信じることは難しい。あまりに力を入れて発言されるとひいてしまうかもしれない。とか考え出すともう怖くてやっていられなくなりそうなのですが、今回の話を見ているとちょっとそんなことを考えてしまいます。
それはともかく、間奏のような位置づけの巻でしたが、この巻があることでマルタのオスタスに対する思いの強さが表現できているし、無駄のように思える探偵を数年間続けたことでこれまでの「少年」から「青年」に変わった思考が見られるようになるのではないでしょうか。まあ、見た感じあまり変わっていない気もしますけど。
鈍感なふりをし続けているといつの間にか本当に鈍感なのか、何かを感じても自分の思い過ごしではないかと考えるようになってしまう気がします。鈍感なふりというのはずるいことかもしれない。それを身につけてしまったマルタは今後オスタスでこれまでと変わらないマルタでいられるのか。思考が肉体年齢に左右されるのかを考える上で(および著者がどのように考えているかを受け取る上で)も面白い展開になったと思います。次巻以降に期待。