北山猛邦 少年検閲官

少年検閲官 (ミステリ・フロンティア)
ちょっと設定がとんでもないと言うかきつすぎて最後まで読むのに時間がかかりました。内容に触れるので一応隠します。
知識が本当は得られない状況のはずなのになぜかいろいろなことを知っていたり、町が閉鎖的なのは住民が外部から受ける影響を気にしていると知っているのに、指摘によって外部の人間を恐れていることに気がついたり、かなり違和感がありました。知識はなぜか受け継がれているのに音楽の演奏技術は廃れている。こういった技術の方が口伝でも直接指導でも残りそうな気がするのですが。
読みながら思ったのは、ミステリで犯人を想像することについて。たまにやってしまいがちなのですが、ミステリを読んでいて途中でちょっと間が空いてしまったとき、登場人物のほとんどが犯人だった場合を想像してしまいます。虱潰しに想像していけばどれかひとつが当てはまる場合も多く、そんなときに「想像が当たった」と思い込んでしまうと(そのことを少しして自覚すると)、馬鹿だなあと反省します。もともと犯人探しがそれほど好きなわけではないので普段は謎は謎のまま読み進めていくし、軽く想像して、その上を行く展開になるのが結構好きです。
この本は途中で間が空いたのでいろいろと想像するかな、と思っていたのですが設定を理解し切れなかったので全く想像しませんでした。そもそも設定に無理がありすぎるように感じます。まるでもしもボックスである条件だけを設定したかのよう。それなのに付随した設定がそこかしこに登場するので早い段階で予想することをあきらめました。これで途中で犯人と動機がわかった人はすごすぎる。ミスリードうんぬんではなくて、世界観が理解できませんでした。
主役のクリスに関してはなぜ日本に来たのかとかが明らかになっていないし(ほのめかしはありました)、検閲官もその組織や今回の彼自身の背景があまり描かれていなかったことからシリーズものになりそうな予感がするのですが、続きを読むかどうかは微妙なところ。もう少し読んで著者が頭の中で構築している世界を知りたい、と言う気持ちと、端々にある不条理さを受け入れられるのか、と言う気持ちが拮抗しています。

おまけ
潜水艦が沈むと表現されていました。でも、クジラが寝そべっている姿を想像していた、とあったので「沈む」イメージとしては沈んだっきりではないようです。