森橋ビンゴ チョコレートゴシップ

チョコレートゴシップ

チョコレートゴシップ

 性的にマイノリティの若者を題材とした作品です。最近ライトノベル出身の作者が普通の文芸書の形式で出版することが多くなってきたような気がします。もともと「ライトノベル」が書きたかったのではなく「物語」を書きたくて作家になった人が殆どだと思うので、得手不得手はあってもいろんな物語を書くことができると思います。
 今回の森橋ビンゴさんは短編集で一度読んだことがあるだけでしたが、印象が良かったので(そのほかにでているライトノベルは今ひとつ食指が動かなかったのですが)購入してみました。
それぞれの感想を少しずつ

  • メンソール・ベイベ

 性的にマイノリティの人の文章を読むと小さな頃から違和感を覚えていたと書いてあることが多いのですが、この物語に登場する彼はあいまいなまま大きくなったようです。だからといってありえないとは思いませんが。結婚してしばらく(かなり)たってからゲイだったと告白する男性もいるようですし、物語自体に破綻は感じません。ただ、主人公達全員の見通しが甘いような気がしました。彼らは繊細で、生きていくことも大変そうに思えるのですが、この先やっていけるのだろうかと、物語を堪能する前に思ってしまいました。

  • 夕焼けブランコ

 女装癖のある青年が主人公。前作から続けて読むとなんとなく、ぼんやりとした男性ばかりが登場します。確かにそういう印象を持つ部分もあるのですが、ちょっと画一的過ぎると言うか、違う青年のはずなのに同じ青年のように思えてしまいます。少女に関しては青年の想像に頼る部分が大きいので、真相はわかりません。

  • アメ車とグルメと太陽と

 どこかで読んだことがあるような話ですが、長さの割には印象に残る作品でした。主人公の男性については以下略。

  • スナヲナキミト

 これもどこかで読んだことがあるような作品でした。
 全体として、既読感が多い作品でした。繊細な若者が描かれているのですが、特にはっとするものがあるわけでもなく、もちろんそれぞれにとっては重大な問題なのかもしれませんが、淡々と物語は進みます。悪い言い方をすれば、思いついた話の途中をくりぬいたような感じ。もっと長い話の方が向いているのでしょうか。印象が良かった競作も、考えてみれば物語の一部しか描かれていません。もっとある程度の長さのあるまとまった話を読んでどうやって物語を終わらせているのかを見てみたい。文章は嫌いなわけではなく、読みやすいので、もう少し様子を見たい作家でした。