金田一蓮十郎 ニコイチ

 いつも作品にリアリティがどうこう言う割にはあまりそういったことを気にしない一面もあって、われながらてきとうな性格だなと思います。この作品も、ちょっと考えればありえない設定なのですが、話が面白いせいかあまり気にならず娯楽作品として十分楽しめる作品です。
 子供の頃はともかく、大人になってしまえば人工的に手を加えない限り男女の区別がつかないことはあまり無いと思うのですが*1、子供をいつまで騙しきれるか、周囲の人間をどこまでだませるかというのも楽しみの一つ。本来の自分を隠したほうが好感をもたれてしまうというのは、こんなに極端な場合ではないとしてもありがちなことではないかと思います。それは、演じているから相手の望む姿を再現したり、想像する完璧な姿を演じたりするからかもしれません。もしかしたら世の中で他人から見ると些細なことに苦しんでいるひとはこれとは逆に、自分の本来ある姿だと認識している風に演じ切れないことで周囲との齟齬を生んでいると思い込んでしまっているのかな、と感じます。
 あまり完璧な姿を演出する気は無くて、むしろ多少だめな部分を見せておいたほうが楽かな、と考えるほうなので(それもまた演じているといえますが)あまり普段の生活で無理はしません。この主人公は自宅にいるときは殆どが演じている姿で、会社にいるときのほうが自然な姿なのですが、それだととても疲れるだろうなと思います。気を張るところが家と会社で反対になっているだけと考えればあまり違いは無いのかもしれませんが、会社にいるときもやっぱり完全な素というわけには行かないでしょうから、毎日が大変でしょう。
 それでも子供のためと思っているのか、コメディタッチで描かれているため悲壮感はあまり無く、とても面白い作品です。絵柄が少し志村貴子さんに似ているかな、と感じるのですが関係者でしょうか。なんとなく著者は女性ではないかと思います。もうしばらくは続くでしょう。楽しみ。

*1:性別が無い、の新井さんのように両性具有のひとは別として。まあ、会ったことはないのですが。