有川浩 クジラの彼

クジラの彼

クジラの彼

相変わらず自衛隊員が大活躍する有川さんの短編集。これまでの作品の後日譚でもあり、単独の作品としても楽しめる作品です。とはいえ、これまでの作品を読んでいたほうがより楽しめるのではないでしょうか。

  • 「クジラの彼」

表題作。これは短編集(作品集。当時の感想はここ)に収録されていた作品なので既読でした。

  • 「有能な彼女」

これも海の底の後日譚。望がどんな子だったのか思い出すのに時間がかかりました。恋人が有能で容姿端麗だったらやきもきするだろうな、と思います。

  • 「ロールアウト」

これは単体の作品でしょうか。航空機に設置されるトイレの話。同性だけでもトイレには気を使うのに、異性がいるところでなんてとても落ち着いてはできません。主人公の男性は頭が固いようで柔軟なあたりとても良いです。怒ったら怖いのか。怖いんだろうなあ。ところで自衛隊の序列が良くわからないのですが、そう簡単にあれが動かせるものなのかと言う点が少し気になりました。

  • 「国防レンアイ」

もともと宣伝用のパンフレットに採用されるほどの容姿を持つ三池と昔から恋心を抱いているのにそうとはいえない伸下のはなし。これも特に関連している作品はなさそうです。自衛隊とはここまで人を大雑把にさせるのか、と思うのはきっと間違った感想です。かつての恋人を馬鹿にすることは自分を馬鹿にすることだと思うのですが、相手をくさすことで自分が上に立っているのだと勘違いしたいひとは結構たくさんいるのでしょう。それに対して一喝した伸下が爽快。

  • 「脱柵」

どこまで取材したのかはわかりませんが、これもきっとよくある話なのだろうな、と思います。幹部候補生とは違って、すごく若い段階で入隊したひとはいい意味でも悪い意味でも純粋なのでしょう

空の中の後日譚。子供に対して正直に答えるのは簡単なようで難しいのではないかと思います。男女ともに格好いい。

 甘い甘い短編集でした。こういうのも良いな、と思える作品です。図書館関連の小説で人気が出ても同じテイストを保って欲しいと思う作家さんです。