伊坂幸太郎 フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

これまでの伊坂節が失われていない短編集でした。ミステリだと言うわけでもなく、何か訴えかけてくるものがあるわけでもないのですが会話が洒脱なためか、面白く読めます。
伊坂さんの作品に登場する人物は飄々としていたり、不思議なところで純粋だったりします。面白いのは、老人たちが結構力強いと言うかたくましいと言うか、落ち着いて見えるけれど波乱万丈な人生をあゆんできたのかな、と思わせる言動を取るところです。あんな老人になれたらいいな、と思いますがどうでしょうか。今回は92歳の老婆が登場しますが、矍鑠としていて格好いいです。登場する老人がとぼけた発言をしても、本当にぼけているのかわざとそうしているのかわからないあたりも面白い。
本作はとても面白い短編集だったと思います。今までもはずれだなと思う作品はないのですが、特に短編集だと会話の妙が光るのかもしれません。