森博嗣 カクレカラクリ

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep

 コカコーラ120周年を記念して、初めて映像化を視野に入れて作られた作品です。120年の歴史の長さを思わせる設定が森博嗣らしい作品でした。少しだけ内容を書くと、120年前に作られた壮大なからくり仕掛けを捜し求める話です。今の機械は結構長期間持たないものが多い。それはプログラム制御のために使用されている部品の耐久性が低いことと、あらかじめ長期間使用することを想定していない製品が多いからですが、かつてからくりを作らせれば天下一品と呼ばれた男の設計理念とはいかなるものであったかを想像してあります。工学には疎いので実際にはどの程度困難なのかは実感しにくいのですが、細部の説明がしっかりしていることと、それを説明っぽく感じさせないところに技量を感じます。120年というのはそれくらい生きていたいと考えていた年齢と一致して、人ですらそれほど機能するのは大変なのに、じっと動かない製品が果たして機能するのか、機能するとしたらどのような機構なのかがしっかり考えられており、さすがだと感じます。
 もともと映像をイメージして小説を書いていらっしゃるようで、森さんの作品は読者としても想像しやすいのですが、今回は特にイメージしやすい作品だったと思います。暗号はすぐにわかるものですが、町並みを今ひとつ想像し切れなかったので、この作品がどのように映像されるのかぜひ見たいところです。森テイストも失われること無く、ファンとしては十分楽しめる作品でした。この作品から森さんの作品に親しむ人ももしかしたらいるかもしれませんし(と言うよりも初めての映像化作品なのでそういった読者のほうが多いでしょう)、入門変としても優れているのではないでしょうか。会話が若干硬い部分もありますが、登場人物はいずれも森作品にふさわしい、ある意味典型的なキャラクタですし、やはり入門編に良いと思われます。mixiにコミュニティができているようですが、一応自分のブログを持っているのでこちらに感想を書きました。mixiは殆ど利用していないのですが、そちらを主に利用している方はそちらも覗いてみれば良いと思います。