されど罪人は竜と踊る Assault

されど罪人は竜と踊る Assault (角川スニーカー文庫)

されど罪人は竜と踊る Assault (角川スニーカー文庫)

 これまでの「されど罪人は竜と踊る」シリーズで小出しにされてきたガユスの過去が描かれた短編集です。初めてこのシリーズが出たときは、なんちゃって科学描写が多い作品だな、という印象と悪口合戦が楽しいという印象しかなかったのですが、シリーズを重ねるにつれて世界観が固まってくると、表面に隠されていたものが次第に見えてきたような気がしていました。残酷な描写が厭われる原因になっているようですが、ただ単に残酷さを描きたいだけではなく、生きていく上の悲しみや、むなしさを描く上で必要な要素なのではないかと思っています。まあ、残酷に過ぎると感じるときもありますし、著者もそういった描写が好きなのでしょう。他にシリーズを持っているのかどうかはよく知らないのですが、この作品は今では刊行されれば必ず読むシリーズとなりました。死ななければ大概の怪我は治ってしまいますし、裏の裏の裏の裏のようなどんでん返しが続くので素直には読めなくなってきているあたりが少し残念ではあります。また、今回はガユスの若かりしころの話だったのですが、あまりこれまでとの違いが感じられませんでした。ただの実力がないガユス、という印象です。
 よくこれだけいろんな悪口があるな、と思うほどの悪口合戦も面白いですし、時折現れる罰ゲームなども面白い。本編がなかなか刊行されませんが、まだまだ広げている伏線があるので(このままかもしれませんが)、しばらくは終わらないと期待しています。