三浦しをん まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒

 とある理由で妻と別れた多田は生まれ故郷のまほろ市で便利屋を営んでいた。便利屋の仕事の一環として預かっていたチワワが行方不明になり、探していたところ、そのチワワを抱えて現れたのは高校時代の友人、行天。高校時代、授業中の事故で指を切り落とした時の一言しか話さなかった行天だったが、再開してからは饒舌な姿を見せる。かつて話さなかったのは面倒だという理由だったと話す行天は行き場を失い多田の元に転がり込む……。
 架空の東京にある町、まほろ市を舞台にした物語です。町の設定がいろいろと考えて作ってあるので実際にあるかのような感覚です。とはいえ、おそらくは実際にある郊外の町を参考に作ってあるのでしょう。千葉県がイメージに近いかもしれません(住んだことはありません)。
 話すのが面倒だからといって話さない行天はやはりかなりの変わり者なのでしょう。だからといって回りに迷惑をかけるわけでもなく、淡々とすごしていました。大人になっても相変わらず淡々としている行天は、ある意味三浦しをんさんの理想なのかもしれない、と感じます。行天は淡々としていても注意力は優れており、人の心の機微もつかむことはできます。ただ、理解はできても感じることはできないのかもしれません。そんな行天を理解できるような気がするのはこちらの傲慢でしょうか。
 登場するキャラクタはどこか現実味がないような部分も多分にありますが、実際はこういった人が都会には多いのでしょうか。娼婦、少年、薬の販売人などなど。だからといって作品がつまらなかったとか、嫌いだとか言うわけではなく、全体的に現実味から少し斜め上を描く三浦しをんさんの作品は、かなり好みです。今後の作品にも期待。