上月雨音 SHI-NO
幼馴染の志乃は成績優秀で、手のかからない子供だが周りとコミュニケーションをとろうとしない。大学生の僕と夕食を共にする習慣があるものの、そのときも会話は殆どない。通常の小学五年生と外見は変わらないものの、思考はもっと深いところにある。近年多発する殺人事件に急実を示す志乃。できるだけ殺伐とした話題からは目をそらせたい僕。二人の日常を保つことはできるのか……。
あとがきには、やばい話題なので出版されるかどうかはわからないと思っていた、とのコメントがありますが、富士見ミステリー文庫は対象年齢が低めなのでしょうか。それはともかく、志乃の性格がクールの一言で片付けてもいいものか、と思います。志乃の性格も僕の性格も表層を撫でただけのような印象で、先輩に関してもあまり描かれることはありません。志乃の鋭さや影響力を示すための描写なのかもしれませんが、連続殺人犯の思考が、急に飛躍することにがっかりしました。あの犯人像で、以後を読む気がだいぶ薄れてしまいました。イラストも、異様に目が大きいことは差し置いて、あまり本文とそぐわない印象です。特に×が。総合的に合わない作品でした。