雪乃紗衣 彩雲国物語―光降る碧の大地
- 作者: 雪乃紗衣,由羅カイリ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/01/31
- メディア: 文庫
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これまでの感想は以下にリンクします。
雪乃紗衣 彩雲国物語―はじまりの風は紅く
雪乃紗衣 彩雲国物語―黄金の約束
雪乃紗衣 彩雲国物語―花は紫宮に咲く
雪乃紗衣 彩雲国物語―想いは遥かなる茶都へ
雪乃紗衣 彩雲国物語―漆黒の月の宴
雪乃紗衣 彩雲国物語―朱に交われば紅
雪乃紗衣 彩雲国物語―欠けゆく白銀の砂時計
雪乃紗衣 彩雲国物語―心は藍よりも深く
茶州編の締めくくりとなるこの巻では、影月が幼いころ命を長らえることができた理由が明らかになります。前作の感想で、どれだけの死を描くことができるのかが重要な点だと書きました。2割助かれば上々だと書きました。それよりは高いものの多くの人が亡くなり、病の深刻さが描かれています。ほとんどが体力がなくなっていたためと言う理由だったのは、まあ、良しとしましょうか。感染症に罹る患者が少ないことを祈ります。
患者と接触することで病気が感染するのではないかと考えた村人から隔離された患者たちは、バリケードで囲まれてしまいます。ここで、囲いの外側から「落し物」として食べ物が差し入れられるのですが、この「落し物」が毒なのではないかと穿った自分を恥じます。てっきり拡散を恐れた村人が毒殺しようと考えたものだと思ったのです。物語の先を読もうとして人のやさしさを考えていませんでした。素朴なだけに、弱者に対する労りの心は強いのかもしれません。
途中まで、前回の予想を超えていたのでとても面白く読めました。最後は一部予想通りになってしまい、残念です。今後彼の活躍する場面が描かれるかどうかは分りませんが、○○の気まぐれが終わらない限り○○ないと言うことですね。うーん…。
今回、まだ幼い少女が活躍します。秀麗の行動に感動した彼女が目指すであろう道はなんとなく分っていたものの、物語の終盤で彼女が実際に口にした場面では少し感動しました。秀麗の反応に、というべきかもしれません。助けてくれる人がまわりにたくさんいるとしても、先駆者としての道は険しいでしょう。それでも、後に続くものの影が見えるのなら止まるわけには行きません。秀麗は今回、むやみに命を奪うやり方ではないやり方を身を持って示すことで、これまでの上から見た治世の仕方に異議を示しました。これから女性官吏としてどう活躍するのか、楽しみです。
茶州編が終了し、今後はどう展開していくのでしょうか。秀麗の心を乱す彼がどう動くのか、出番が少なかった劉輝や絳攸の出番は増えるのか、などなど。
物語のスタイルが、史実を伝える形なので生活などの表記が少ないのかもしれません。後世で称えられるであろう秀麗の治世を伝える物語なので、読者として現代日本を想定しているわけではなく、彩雲国の人間を想定しているのかな、とも思います。
それでも、後世に伝えるためならその時代の風俗を伝えるのも必要なのではないかな、と思います。物語の最後に「〜と伝えられる〜の治世の始まりである」と言った表記があるので後日談として描いているのだろう、と思います。よく外れる予想をするなら、最後はこの物語を読んだ子供(秀麗の子孫かも)が、今、女性官吏が活躍できるのは秀麗のおかげなんだね、と言いつつ自分もより良い治世を志して勉学に励む…といった終わり方かも、なんて想像します。