吉田親司 MM 記憶師たちの夜明け

  あらすじはなし。無理やりな設定に少々うんざりです。イーガンに毒されてしまったのか、無理な設定にはそれなりの土台を形成するだけの設定が欲しいと思います。
 科学的なつもりで書いているのであろう解説のかなりが的外れに感じます。脳のどの部分がどの機能に連結しているかはよく調べてあると思いますが、知識が先行して全体が今ひとつ描けていません。糸使いといえば、まず思い浮かぶのが秋せつらです。秋せつらは糸を使いこなして人を操作したり、切り刻んだりしますが、さすがに記憶までは操作していません。最近は少し離れているので、新作に関しては良くわかりませんが。
 少なくとも、糸一本で操ったり覗いたりできるほど記憶とは単純ではありません。百歩譲ったとしても、糸は何本も必要なのでは無いでしょうか。秋せつらが人を操る場合でも何十本、何百本という妖糸を操っています。操作できるのかどうかはまた別の問題としても、あまりにも脳を軽く見積もった設定を受け入れることはできませんでした。
 同じ菊地秀行さんの「エイリアンシリーズ」に登場した単分子チェーンソーのような使い方ならまだ受け入れられますが、糸一本でそこまでできることは主人公の能力が秀でていることを示すよりもむしろ、トンデモな設定にしか感じられません。伝奇小説でも無いということです。
 よく最後まで読んだな、と思えます。終盤はもうありえないとかどうとかではなくて、少し頭の良い中学生の妄想のような敵の設定です。一応未読の方のために内容は書きませんが、ため息ばかり。もう、脳に関しては語らないほうがいいのでは?と思います。でも、それを除くと基本設定がなくなってしまうも同然なので、無理でしょう。その他にも突っ込むところが山積みですが、あえてもう何も言うまい。疲れました。
 続巻が出ていると言うことはファンがいることを示しているのでしょうが、全くだめでした。受け入れられません。続編は読みません。