山口真美 視覚世界の謎に迫る

視覚世界の謎に迫る―脳と視覚の実験心理学 (ブルーバックス)

視覚世界の謎に迫る―脳と視覚の実験心理学 (ブルーバックス)

 表紙が北岡明佳さんの錯視の図だったので、錯視に関する研究成果をまとめたものかと思って読んだのですが、良い意味で予想を裏切られました。”見る”ことは光の通り道である眼球の機能も重要だけれど、それを解析するための脳の働きが重要であることは知っていましたが、実際にどのように発達するのかとか、どこまでがわかっているのかはぜんぜん知りませんでした。どのようにして空間を認識しているのかなど、とても面白かったです。特に面白かったのは終盤の顔を認識する話です。
 単純に眼の機能を紹介することに終わらず、脳の機能にまで言及する姿勢が好ましい。「〜であることが実験の結果わかっている」と言う表記が散見されるのは、本の分量から仕方がないのかもしれません。ブルーバックスには、「この世界に興味を抱くきっかけになる一冊」、と言う目的があるように思えますが、その意味では最適の一冊です。高校生のころに見ていたらこの道に進みたくなったかも、と思えるほどの内容です。