復刊ドットコム奮戦記

 毎日毎日たくさんの本が出版されて、欲しい本はその時期に手に入れないと入手し難くなっている生鮮食品のようになって居るようです。古い本に関する情報は今まであまり入りにくかったので、絶版になってしまった本のうち、どのような本が面白いのか、どのような本がお勧めなのかがわかりにくくなっていました。今ではウェブが発達しているからそういった情報が比較的はいり易い。でも、古本屋は新古書店のような形になってしまっているし、昔ながらの古本屋さんはブックオフなどの大型古書店に圧倒されて潰れかけています。
 そんな顧客の要望をかなえるためのシステムが復刊ドットコムで、それを立ち上げた方たちがシステムを確立するまでの過程が描かれています。もはや確立するまでの流れを公表して、二番煎じの業者が出てきたとしても敗れることは無いと感じているからこそこの本を出版したのだと思います。競争があるのならあったほうがいいと考えたのかもしれません。
 確かに、かつて手に入らなかった本が手にはいるのならば復刊して欲しい、という方は多いかもしれません。特に子供のころは何冊も買ってもらえるわけでもないので、涙を飲んだ人がいるでしょう。その望みがかなうことは単純にうれしいことです。でも、この本を読んで少し気になったことがありました。それは、著作者自身が、復刊を望まないのに、読者からの要望に応えなければいけないのか、ということ。古い作品をいまさら出したくないという方はまだしも、何らかの傷を抱えて出版をやめた方に執拗に再販を迫ることが果たして良いことなのか疑問に感じます。
 オーナは「私たちはしつこいのです」と誇らしげに語ります。確かに仕事としてはまっとうな姿勢かもしれません。でも、著作者の立場になって考えてみたら、いろいろな姿勢があってもいいのではないかと思います。出版社の倒産などで消えてしまった名作を甦らせることは賛成です。ですが、もっといろいろな視点から考えて欲しいな、と思いました。