- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2006/02/04
- メディア: 単行本
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現役医師の作品だと言うことで、手術や医局のリアリティがありました。バチスタ手術と言えば「医龍」を思い出します。あちらは漫画なので絵による情報量がとても多いし、すでに10巻まで出ているのでバチスタ手術に関しても相当詳しく書いてあります。その前知識があったからか、バチスタ手術のイメージはしやすかったです。医局の政治的な動きが面白い。その頭脳をもっといい方向に生かして欲しいですね。実際はどうなのかは知りませんが。
作中で田口が名前の由来についてたずねる場面があります。直接尋ねることは無くても、他人の名前の由来について考えることがあります。両親がどのような思いを込めて名前を付けたのかを考えるのは結構楽しいのですが、たいした由来が無い場合も多いのではないでしょうか。画数だけで決められてしまったとか、親のどちらかの初恋の相手とか。会社の偉いヒトから取った名前らしいので、特に名前に思い入れはありませんが、漢字の持つ意味に引きずられている部分があるような気はしています。
講評にもありましたが、主人公の田口や、後に参加する白鳥のキャラクタが立っていたと思います。特に白鳥については他の方もきっとどこかでコメントしているのでしょうが、「こんな経歴でこんな性格のヒトいる?」と言いたいくらい突き抜けた人物です。彼の理論が本当なのか、当てずっぽうで言っているのか判断に迷うところですが、行動は経験を元に、田口に話した理論は適当に言っているように感じました。もう少し言えば、追求している事柄については理論立てて考えているかもしれませんが、ある種の法則のような理論はでっち上げの印象です。
彼の部下である女性が一方的に彼からの目線で描かれるだけで登場しなかったのは残念です。ですが、今回登場しなかったのは好感が持てました。首席だという話ですし、ありきたりな女性が登場してもがっかりしたかもしれません。個性のあるキャラクタとして登場して欲しいので、じっくり考えて次回から登場して欲しいです。
犯人は比較的わかりやすいかもしれません。大概、ミステリを読むときは半分ぐらい読んだ時点で犯人を想像するのですが、今回は当たっていました。途中、ミスリードする部分があったので、あらら、また外れたかな、と思いましたがあたっていました。
ミスリードというか、専門的な分野の話で、ここでこのようなことはできないと断言されたら素人には判断のしようがありません。多分、○○検査をすればわかったはず。それが、瑕疵といえば瑕疵ですが、作品の面白さを損なうものではありません。
主人公以外にも一癖もふた癖もある登場人物ばかりです。なぜか影響力を持っている人たちの背景も描いてもらいたいので、ぜひシリーズ化して欲しいです。物語の締め方も、この場合これでよかったと思います。それほど多作な方では無いような気がしますが、粗製濫造よりはそちらのほうがいいかもしれません。しかし、著者は格好良い名前ですね。