雪乃紗衣 彩雲国物語―漆黒の月の宴

 茶州に到着したものの、正式に州牧に就任するためには州都に行かなければいけなかった。最後まで妨害をあきらめない茶一族。しかし、この日のために燕青は綿密な計画を練っていた。裏の裏をかくための策謀が張り巡らされた茶州で秀麗と影月は無事州牧になることができるのか。
 前作で無事到着したものの思っていましたが、いわば県に入っただけで県庁所在地まで行かないと正式な州牧にはなれないのですね。今作では”茶州の禿鷹”が大活躍。ってちょっと活躍しすぎではないでしょうか。彼らの超常能力の一端を引用します。
 

「足の裏に妙な感じで音が跳ね返ってくる。これは獣をつかまえるために落とし穴を作って確認のために感触を確かめたときと同じだ。足音の跳ね返り方からして広く深いがなんだかモノがごちゃごちゃ置いてあるようだ。それに微量の熱源も察知したぞ。」

 ってすごいとかどうとかではなくてあり得なさ過ぎでしょう。百歩譲って下が空洞だということがわかったとしても、物があるかどうかなんてさすがにわからないでしょうし、まして熱源をや。この場面はちょっとやりすぎかな、と思いました。
 今回もほわほわした彼は暗躍していたようですが、お茶が欲しいだけでそこまでするのも、愛情の大きさからでしょうか。この作品の登場人物にはセクシャルな印象は全くないのですが、精神的にはどの人も結構大人びているはずなのに、恋愛に関しては晩生ですね。ま、あまり人のことは言えないので追求は避けておきましょう。あと、少し毒や香料の効果を過信しすぎていると思います。即効性の毒とか遅効性の毒とか、組み合わせによって麻薬のような効果を持つとか。遅効性の毒といっても大概は何年かかけて効果が顕れるのを待つものです。
 秀麗の心に少し入り込んだ彼はまだ生き延びそうですね。おそらくこの本の対象年齢は10代はじめから後半ぐらいなのだろうな、と感じます。大人として深読みするのもまあ楽しいといえば楽しいですし、さくさく読めるのでそれも心地良い。もうすぐ追いついてしまうのが残念といえば残念。あまりチェックするレーベルではないので最新作が出ても見逃してしまうかも、というのが最近の懸念です。