雪乃紗衣 彩雲国物語―はじまりの風は紅く

 彩雲国は内乱を終結させたものの国は回復し始めたばかりだった。王位争いで生き残った劉輝は国政に携わろうとしない無気力な王で、上官たちの悩みの種だった。そこで教育係に指名されたのは紅秀麗。家柄は良いが収入が無い彼女は報酬に釣られて仕官を請け負うこととなった。見た目は十人並みでも礼儀作法を叩き込まれており、市井の環境も良く知る彼女は、王にどのような教育を施すのか・・・。
 あらすじを書いていてなんだか少し違うなあ、と思うのですがうそは書いていないのでまあ、良しとしましょう。雪乃紗衣さんのデビュー作だそうです。どこかのサイトで十二国記に匹敵する面白さだとあったので、大人買いしてみました。まだ導入部なのでしょうか、比較的あっさりとした内容です。十二国記の密度には及びませんが、あちらは何しろ寡作なので、作品の製作スピードも実力のうちと評価したいところです。
 物語は駄目なふりをしている王と優秀な家臣たち。そして暗躍する陰の実力者たちと盛りだくさん。関係者がほとんどものすごい実力者なのができすぎといえばできすぎでしょうか。でも、実際トップに立つ人の周りには実力者がそろっている場合も多いでしょうし、それほど不自然なことではないのかもしれません。これがデビュー作ということなので、本来は完結していた話なのでしょうが、少しなぞが散りばめられていたり、後に続くような仕上がりになっています。現時点では、今後どのような展開になるのか予想がつきません。予想していないだけですが。
 登場人物に元気があってその点はとても好ましいです。これほど若い人たちが、いくら優秀だとしても組織の頂点付近に配属されるのだろうか、と思いますが内乱で年長の優秀な方たちはなくなってしまったのでしょうか。それとも、内乱が終結した結果、優秀な人物は年齢にかかわらず登用されるようになったのかも知れません。それはそれで健全な組織だと思います。しかし、彼らの優秀さはまだこの巻では発揮されていません。そもそも方向音痴な人間が・・・げふんげふん。
 何はともあれ、テンポも良いし、面白い作品でした。秀麗がちょっとかまととぶっていたり、誰の好みにしようとしているのか同性愛を匂わせる描写が少々アレですが、一気に購入したことを後悔させない作品でした。今後に期待大です。