[冲方丁]十二人の死にたい子供たち。
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/10/15
- メディア: 単行本
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本作ではいろんな理由で死にたくなった子供たちが登場する。大人から見れば、第三者から見れば些細な出来事かもしれないけど、言葉にすればその一瞬に思えることでも、それがずっと続くのならそれは確かに苦痛であり、死に至る理由なのだろう。ただ、知識があれば誤解せずに済んだこともあるだろうし、素直になれば諍いの原因を取り除けることもあるだろう。だからこそ、知識を得る必要があるし、それらにアクセスする技術も必要だとおもう。最近、検索で上位に来ることのみを目的とした医療情報サイトが注目された。コピー・ペーストを推奨し、内容よりも検索で上位に来るための言葉や構成になるよう指導していたようだ。ある程度知っている人が見ればあり得ない内容だとわかるのだろうけど、知識の少ない子供が検索して、上位に来ていたらこれが有用なサイトなのだと捉えてもおかしくない。深刻な内容について調べている場合、情報リテラシーがあれば多方面から調べるだろうけど、そうでなければ一つ二つ見て理解した気になってしまう。そのサイトを見て未来への希望を失う子がいたかもしれない。今後もある程度いたちごっこは続くだろう。今回の医療関連のように、重要なことについては、政府から発信してもらってもいいのような気もする。これだけウェブが発達したのだから、それ専門の部署があってもおかしくない。
本作はミステリといえるのかな?いろいろと状況が提示されているのだけど、例えばAからBに移動するときにCが使えない、と言われてもそれ以外の経路があるのかないのかよくわからないまま読み進めたので(明確に書いてあったかもしれないけど視点が変わるので登場人物がそう思い込んでいると理解して読み進めたかもしれない)、あまりミステリとして読んではいなくて、死にたい理由にどれくらい現実味があるだろうか、と考えながら読んでいた。ミステリの展開としてはこんなものだろうけど、若干不満な点はある。あるけど、途中からそこは解消されないだろうと判断したこともあって、ミステリとしては読まなかった。作法としては間違っていない(たぶん)。冲方丁の現代ものはあまりないのだろうか。知らずに読んだらだれが書いたのかわからなかっただろう。何かを考えるきっかけにはいいけど、冲方丁の新作として期待すると肩透かしを食らうかもしれない。