川西蘭 セカンドウインド

セカンドウィンド〈1〉 (ピュアフル文庫)

セカンドウィンド〈1〉 (ピュアフル文庫)

 主人公の洋は祖父との二人暮し。父親は洋が物心着く前に亡くなり、母親は海外に。自転車乗りだった父親のことを祖父は洋に伝えておらず、自転車に乗ることに反対している。それでも自転車に引かれる洋は、オークションで手に入れた自転車を大切に扱っていた。ある日、山で自転車を楽しんでいた洋のそばを自転車に乗った集団が通過した。これが、洋の自転車人生を変えるきっかけとなる。
 これは面白い。自転車のりが主人公の作品としては「サクリファイス」や「シャカリキ」があります。どちらも好きな作品です。自転車競技が好きなわけでもないし、あまり詳しくもないのですが、舞台としてはすきなんかもしれません。もしくは、舞台は何であれ、一人の人間(と周りの人間)が成長していく姿がすきなのかもしれません。
 この小説も主人公の洋が成長していく物語です。あまり成長しないままからだだけは大人になってしまった(もはや老化といっても良いですが)大人ですが、多分このまま死んでいくのですがそれだけに他人の成長をほほえましく見ているのではないでしょうか。とても面白い。
 どれくらいのペースで刊行されるのかはわかりませんが、書下ろしなのに文庫、というあたりがとても良い。対象が若い子たちだからだと思うのですが(とはいえ最近の文庫の値段は結構高めですが)、もっとたくさん読まれるといいな、と思う本でした。
セカンドウィンド〈2〉 (ピュアフル文庫)

セカンドウィンド〈2〉 (ピュアフル文庫)

 ちょっと感想を書いて、すぐに二巻が読みたくなったので購入。洋は自分の長所と呼べる部分が無いことにあせりを感じているのか不満なのか。オールラウンダというのは本人からしたら器用貧乏に思えるのかもしれません。洋が高校生になって、周りの成長に引っ張られるかたちの2巻です。この巻ではカナダからの留学生が登場したり、寮で一年間だけ生活をともにした友人が出てきたり、今後さらに面白くなりそうな要素がちりばめられています。続刊も楽しみ。母親が出てきそうで出てこない。それもまた以後の楽しみでしょうか。
 山登りが得意な親友、岳は洋の幼馴染と親密になっているように見えます。その幼馴染(違う高校に通っている友人を連れてきて、その子は洋に好意を持っているような雰囲気。まだ淡い恋模様ですが、それもこの先楽しみです。