貴志祐介 新世界より

新世界より (上)

新世界より (上)

新世界より (下)

新世界より (下)

近未来、人類は「呪力」と呼ばれる超能力を手に入れた。その世界では、大人になるために呪力を手に入れる必要が有るが、呪力は強大な力であり、その力が使われる方向性は正しくなければいけない。子供たちの成長は徹底的な共同体の管理下にあった。高度な知能を持つバケネズミとは、世界が半壊した理由とはなにか。
とりあえず、面白かった。内容にはあまり触れないで書きますが、まっさらな状態で読んだほうが面白く読めると思います。
まず、この作品は主人公である早季の手記として書かれているのですが、早季の語彙が古めかしい点に気が付くと思います。特に色の表現がむかしの表現で、もしかしたら正しく想像できていないかもしれないのですが、そういった知識が自然と身についている感じは良かったです。
いろんな動物が出てきます。全く別の生態系を作っているのですが、それを表現するためにはあの長さが必要だったのかもしれません。ちょっと気になったのは、じめじめしたところにいる生き物、つまり比較的単純な生き物については進化した生き物がたくさん出てくるのですが、大きな生き物、爬虫類以上の進化の過程ではあまり変化がないこと。やっぱり世代交代の時間が長いからでしょうか。
物語は有る条件化での人の進化の仕方や、その方向性について問うだけではなく、こどもたちの若々しい思いなども描いています。あまりわくわくするような子供時代を送っていないので懐かしい、と言う感覚はありませんがちょっとどきどきするし、未熟なやり取りがとてもいい。
早季の成長とともに時代は進むのですが、バケネズミがすごい勢いで知能をましていきます。そのあたりから、もしかしてこの設定は…と思い始めました。自分が性格が悪いからそう考えているんだ、と思いながら読んでいました。実際にどうだったのかは、書きません。
最後に、一番綺麗だったのはカヌーの場面。さざなみがなくなった場面を想像したらちょっとぞくっときました。あれを(見てないけど)10代で友人と一緒に見ていたら本当に一生記憶に残る場面だろうな、と思いました。