草葉の陰で見つけたもの 大田十折

草葉の陰で見つけたもの

草葉の陰で見つけたもの

 面白かった。受賞作である表題作はとても軽く読める文体ですが、中身はしっかりと面白い。生首と少女の物語ですが、主人公の彼と彼女がどこまで意思の疎通が出来ていたのか、本当はわかっていたのにわからない不利をしていたのかそれとも本当に何もわからなかったのか。設定がちょっとファンタジィめいた部分があるので、どんなものでも想像できてしまうのですがそれがまた心地よい。インタビューをみると、文体からイメージしていた姿とは少し異なりますが、それはあまり気になりません。作者は乙一さんが好きなようです。乙一さんと同じように小説にこだわらない表現にいくかもしれないな、とインタビューを読んで感じました。対話では小説でがんばりたい旨の発言をしていますが、なんとなくそう感じます。まだ若い、という印象があるからかもしれません。
 もうひとつの作品はロボットと家族の交流を描いたものですが、これも良かった。ある程度想像の余地を残す表現をしているように感じたのですが、個人的にはそれがすごく好みに合います。多作なのか寡作なのかはわかりませんが、次回作を楽しみにしたい作家です。