椹野道流 亡羊の嘆

亡羊の嘆 鬼籍通覧 (講談社ノベルス)

亡羊の嘆 鬼籍通覧 (講談社ノベルス)

 久しぶりに刊行された鬼籍通覧シリーズ。このシリーズは結構好きなのでとてもうれしい。法医学を学ぶ学生や助手が主人公ですが、それぞれのキャラクタが真剣に法医学を学ぼう、修めようとしている姿がとてもいい。法医学と言え+ば海堂尊さんの「チーム・バチスタ」シリーズでだいぶ認知されるようになったかもしれません。そういった意味では彼の功績はとても大きい。もちろん、医学者ではないし、物語の面白さを楽しんでいるのですが、新しい知識を知ることは楽しい。
 この鬼籍通覧シリーズはそれほどミステリ色が強い作品ではないし、ある程度進めば(紙面の残りからとかで)どのように物語が進むかはだいたいわかるのですがそれでも面白いのは登場人物の個性によるものでしょうか。いつまでも若い、と言えば若い登場人物です。まあ、それはいいとしてミチルだけではなく筧や伊月もいいキャラクタをしています。筧はちょっと草食動物感が強すぎる気もしますが、あくの強いキャラクタばかりの中では彼の存在によってほのぼのできるところがあります。
 このシリーズでいいのは食事の部分がきちんと意識して描かれているところ。あまり楽しみが無いほうなのですが、楽しさの中で食事が占める割合は結構大きいと思えるのに物語の中ではあまり描かれていないことが多い中、おいしそうに、楽しそうに食事をするようすが描かれているのは良い。死体を扱う物語なので、それに対して「生きている」部分をきちんと描こうとしているのでしょう(気のせいかも知れませんが)。
 それほどたくさん刊行されなくてもいいのですが、読んでしまうと次が楽しみになります。次回作を楽しみに待とうと思います。