綿谷りさ 夢を与える

夢を与える

夢を与える

インストールを読んだのがだいぶ前なので細かいところは忘れてしまいましたが、相変わらず綺麗な日本語だな、と思いました。
物語はチャイルドモデルになった少女が成長していく話です。どこかで見たインタビューでは受賞して取材を受けたことが参考になった、とありました。それはTV局の内情なのか、製作風景なのかはわかりませんが「撮られる側」から見たTV局だな、と思える描写は結構たくさんあったように思えます。話自体はそれほど目新しいものではなく、新しい視点があったとも特に思えませんでしたが、言葉が綺麗なためかするすると読めるのでストレスはありません。
Mint Julepでは読みにくかった文体が変わったとありますが、その辺はどう変わったのかよくわかりません。インストールもそれなりにするすると読めたし、そのときも綺麗な日本語だな、と思ったことを記憶しているので、人によって受ける印象が異なるのかもしれません。
そこでちょっと思ったのが「読みやすさ」についてです。読みにくい本と言うのは確かにあって、先日の「天帝のはしたなき果実」は読みにくい作品でした。ただ、読みにくさと面白さが必ずしも反比例するわけではなく、読みにくくても面白い本もあるし、読みやすくても面白くない本もあります。他のひとはどうかわかりませんが、読みやすい本と言うのは「想像しやすいことがらをなじみのある表現で描いているもの」であると思います。だから稼動かはわかりませんが海外の小説はとても読みにくい。翻訳家によって多少の違いはあるものの、翻訳された小説は苦手です。
綿谷さんの今回の作品はあまり面白いとは思いませんでしたが、言葉自体はとてもよかったし、それだけでも価値があるように思えます。これからも小説を書き続けるのか、別の道を進むのかはわかりませんが、出版されたら読んでみたいと思える作家の一人です。