大崎梢 配達あかずきん

配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)

配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)

 北村薫さんや加納朋子さんと同じ系列の、日常のなぞを主題とした作品です。書店に持ち込まれた謎を店員の女性とアルバイトの女性が解決する、と言う構造です。暴れん坊本屋さんでも時々描かれていますが、テレビで見ただけの作品を探す人が意外と多いのだな、と感じます。著者の大崎さんは取材をしたのか、書店での勤務経験があるのか、現実味に富んだ描写も多く、物語にもあまり違和感はありませんでした。一見地味な書店員と言う仕事ですが、彼らがいて成立することも結構あるのだな、と思います。理髪店や美容院では店員が雑誌を買いに行っているのかとなんとなく思っていたのですが、配達しているのですね。これも、通販で定期購読にすればあまり手間も無くできてしまう類の仕事かもしれませんが、近所付き合いの一環だと考えると配達することも重要な仕事かもしれません。
 和歌の話など、あまり知識が無いので時折こういった形で知ることはとても楽しいです。作品に登場することで興味を持つ人もいるかもしれませんし、それで知識を得るのも楽しいので好きです。連作の中で、入院患者に本を薦める場面があったのですが、もし、誰かに相談されたとしたらその人にあった本を選ぶことができるだろうか、と考えてしまいました。この作品に出てきた人は凄いですね。まあ、実際にこれほどの感受性を持った人に読んでもらえるかどうかはわからなかったはずで、お互いにとって幸運だったと言える話かもしれません。あ、今帯を見たらもと書店員と書いてありました。仕事の描写に現実味があるのも当然ですね。