こうの史代 さんさん録 1巻

さんさん録 (1) (ACTION COMICS)

　妻を亡くし男やもめとなった参平は息子の家族と同居を始める。定年で仕事も終わり、時間がたくさんある参平は嫁の礼花が仕事にでたいと希望したことをきっかけに専業主夫になることを決める……。
　ゆっくりとした時間が流れる、こうの史代さんの物語です。油断してみていると一コマにとんでもない時間が流れており、そのギャップに思わずくすりとさせられてしまいます。基本はまじめな参平さんが、真剣に行動しているのに少しずれている様子がほほえましい。嫁の礼花さんはしっかりしているようで少し抜けている所や、娘の乃菜は見た目はかわいらしい子供ではないものの、昆虫好きと言う変わった個性を持っているところが面白い。
　こうの史代さんの作品は、時間の流れを感じながら読む部分が多いので、文章でそのよさを伝えることはとても難しい。これまで何作か購入しましたが、どの作品もかなり合う作品でした。あくせくとしないことやのんびり暮らすことが必ずしもよいとは思いませんが、こうのさんの作品を読むと、こういうのもいいかもしれない、と感じられます。固まった頭をほぐすのにちょうど良いのかもしれません。
　子供がいないので気持ちはわからないのですが、孫と言えば無条件にかわいく見えるのではないかと思うのに、参平さんは乃菜のことを今ひとつかわいいと思っていません。それでも虐待するわけも無く、ただ面白い子供と接するように対応する参平さんがいいですね。そういえば、祖母からこの子はこんなに太っていて今後生きていけるのか、と心配されていた(らしい)話を思い出しました。祖母から見たらかわいくはない子供だったのかもしれません。
　たまにツボにはまる描写があって、誰かがいる場所では読めないな、と思いました。好きなキャラクタは参平さんと乃菜、そして、ヘッドハンティングを仕事としている仙川さんです。まだ続くようなので、次回作がとても楽しみです。