椹野 道流 貴族探偵エドワード 古き古城に眠るもの

 大雪のある日、移動も困難な中依頼にやってきたのはホテルの管理人。古城を改築したホテルはそれなりに繁盛していたものの、夜中に不審な人物が現われると悪評が立つ。エドワードは育て役のシーヴァと、前回の事件から居候をしている少年、トーヤと共に調査を開始する。その矢先、宿泊客が死亡し、事件は深刻なものへと発展する……。
 前回の感想はここです。作品の印象が「マルタ・サギーは探偵ですか?」に近いのは、外聞に頓着しない主人公と彼を慕う少年がいると言う設定が似ているからかな、と思いました。主人公の功績で出世する刑事は、GOSICKにもありますが、あちらとの印象は異なります。おそらく、舞台の雰囲気が(「マルタ〜」は架空の街ですが)似ているのかも、と推測。
 主人公はエドワードのはずなのですが、周りの人物のほうが存在感が強いように思えます。エドワードは頭脳明晰で美貌の持ち主のはずなのに、なぜでしょうか。あまりできすぎな人物なので逆に特徴がでにくいのかもしれません。しかし、シーヴァは良くできた人だなあ。まだ若いのに、自分の前にでる場所と、控える場所を心得ていますし、状況から推理する能力などはエドワードに劣るかもしれませんが、優れた人物だと思います。大家さんと上手くいくといいと願います。
 今回登場したエドワードの先輩、クレメンスが、家庭の事情からエドワードとの学園生活が送れなくなってしまい、それを支えようとする彼に、「自分が十分な力を持っていないのに他人を助けようなどと思ってはいけない。それは傲慢と言うものだよ」と言葉を残します。親の力を自分の力と錯覚してしまうことは、現実社会でも多い。でも、遺伝で受け継がれた才能や、環境を維持してもらうことで育つ力もあるので、それも含めて自分の力でもあるのでしょう。完全に分離して考えることは難しいのですが、財産に関しては自分で稼ぐようになってからでないと価値は無い(少ない)と考えます。どうせ将来受け継ぐものだ、と言う考え方もあるかもしれませんが。
 推理ものというほど推理に重きを置いた作品ではありません。ライトノベルではどこまで異世界の力、と言うか、現実では不可解な力を受け入れているかによって読み方が変わってきます。薬屋探偵のように、かなりアクロバティックな展開もあるのでその辺りは要注意。初めて薬や探偵を読んだときは驚きました。まあ、本の場合だまされたり、予想外の出来事が起こることは楽しいのですが。それなりのペースで刊行されています。監察医シリーズはいつでるのか、とは思いますが、書きやすいものと書きにくいものがあるのでしょう。今後も楽しみにしています。

 実は一番楽しみにしているのは「にゃんこ亭のレシピ」だったりします。