葉山透 ニライカナイをさがして

 空港に一枚だけ張り替えるのを忘れられたポスタがあった。そのポスタは沖縄旅行の宣伝のために造られたもので、人気絶頂のアイドル宮沢梨花がモデルをしている。通学前に空港の喫茶店で朝食をとろうとしていた松本拓郎が一枚だけ残されたポスタを批判していると、一人の女性が声をかけてきた。その女性は写真のモデルである梨花で、戸惑う拓郎を尻目に、拉致するような形で沖縄へ旅することとなった。思いがけない出会いと旅。梨花に振り回される拓郎だが、道中次第に打ち解けあい、目的地へ到着する。梨花は求める物を見つけ出すことが出来るのか・・・。
 ローマの休日のように一見立場が大きく異なる若者二人のロードムービー風小説です。わがままなアイドルが普通の高校生を振り回す様はありがちといえばありがちです。何かを見ながら書いたかのようなキャラクタ造形だな、と感じる部分は多数ありましたが、この作品が始めての「ローマの休日」型小説なら十分に楽しめるかもしれません。良くも悪くもこの手の小説をたくさん読んできましたので、それほど思いいれのある作品にはなりませんでした。表紙のイラストはなんとなく良かったのですが、作中のイラストはあまり好みではありませんでした。
 あら捜しのようなので書こうかどうか迷いましたが、Physical Interfaceの略がFIと言うのが引っかかりました。誰も編集者は何も言わなかったのか、それとも見逃していただけで意味があったのかはわかりません。もし、著者の勘違いなら、一応物語で重要な位置を占めるシステムなだけにきちんとチェックして欲しかったですね。