米原秀幸 フルアヘッド!ココ

フルアヘッド!ココ 29 (少年チャンピオン・コミックス)



 孤児であることに引け目を感じず、港町でたくましく育った少年。ココ・フェルケナ。海賊に憧れるココは、ある物を目的に港に立ち寄った海賊ジョン・バーツと出会い、彼の船に乗船することになる。バーツの目的は古代から伝えられる宝を探し当てることだ。魅力的なクルーに囲まれたココは彼らの助けもあって次第に成長していく。様々な出会いと別れの中で、ココ自らがは特別な血を持つ、オールドブラッドであることを知る。その特別な力とは、そして古代の宝とつながりはあるのか。
 本を整理することになって、手放すことにしたので改めて読みました。米原秀幸さんは魅力的なキャラクタの造形が上手で、今回のように長編になるとその過去までいろいろと描いてくれました。途中まで主人公はバーツのようでしたが、やはり真の主役はココであることが後半から明確にされていきます。とは言うものの、この物語の主人公はクルー全員であり、彼らがいないことにはこの物語は成り立ちません。
 中でも好きなキャラクタは「先天性殺し屋」ソードです。彼は幼少の頃実の母親に片目を奪われます。それにもかかわらず剣の腕を磨き、比類する者がいないほどの使い手となり、殺し屋として名を馳せることとなります。それでも孤独だったソード。名の売れた殺し屋なので誰も近づく者もいなかったソード。そんな彼を船に誘ったバーツ。適度な距離を保ちつつ、親身になってくれるクルーを彼は、遂にであった宝物だと認識します。孤独から開放してくれた仲間はソードにとって本当の宝であり、死神ソードの名は捨てました。物語の終盤で、ある少女と出会ったソードは家族の絆とは何か、と言うことを感じました。最後の敵を前に死を迎えそうになったソード。死を目前に彼はこう思います。

「自分を傷つけた母親を抱きしめたい」


もうこの場面がとても良くて、感動でした。
 他のキャラクタも強く、優しく魅力的です。その後の作品「SWITCH]は今ひとつですが、この作品はとても良い。特に終盤は熱く、激しく、少しうるっときてしまう場面も多々あって傑作といって良い作品だと思います。