桜庭一樹 ブルースカイ

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)





 中世のドイツで10歳の少女マリーは祖母と二人暮し。よそ者であるマリーと祖母は比較的大きな、活気のある町、レンスの片隅でひそやかな生活を送る。そんなマリーにも分け隔てなく接する、美しい娘クリスティーネは、不作で疫病が流行りだしたことから始まった魔女狩りの犠牲となる。マリーの記憶が5歳より以前から無い理由とは。そして、不可解な言葉で呪いをする祖母の正体は・・・。
 3つの異なった時空での少女の物語です。第一部はマリーの一人称で物語が語られているのですが、妙に大人びた描写に違和感を感じていました。冷静な視点、多様な語彙はとても10歳の少女のものではありません。でも、この違和感の理由は第二部を読むことで明らかになります。読んでいる最中で予想していたところと着地点が異なりました。こういう意外性、と言うか予想外の展開は楽しいですね。ただ、この世界の構成が少し良くわかりませんでした。あまり詳しいことを書くと興醒めになってしまうのでやめますが、作中のリアルとアーティフィシャルな部分の境界がわからないといいますか、時空の繋がりだけでは説明がつかないような気がしました。
 現在、ウェブの発達によって世界中が繋がったかのようですが、実際には海外のサイトを見る機会も少なく、世界中が繋がったという実感はあまり持てていません。国際語として英語が利用されているので、英語を母国語としている方、もしくは英語が堪能な方はもう少し違った印象かもしれませんね。それでも若干程度が異なるくらいでしょう。
 なぜこのようなことを書いたかと言うと、本作が世界との繋がりを描いた物語だからです。近い将来、誰とでも繋がりを持てる時代が来たとしたら、却って身近な人間との関わりが大切になってくるように思えます。まあ、それは未来の話ではなく、今も同じかも知れませんが。