松岡圭祐 ソウルで逢えたら

ソウルで逢えたら

ソウルで逢えたら





 33歳の鈴川明恵は軽い気持ちで金融会社から借金し、返済が遅れ利息が膨れ上がってしまう。水商売に手を出そうとしたもののみすぼらしい身なりと韓国ドラマにはまっていることから就職を断られる。一念発起し、韓国へ向かう明恵。就職斡旋所で得た仕事は芸能プロダクションで日本語の教師をするという物だった。しかし実態は異なり・・・。
 最初に感想を書けば、とても面白かったです。本当かどうかはわかりませんが韓国の風習などが描かれていて、主人公とともに日本との違いを感じることが出来ます。かつての戦いの名残で未だ完全な友好関係とは決していえない韓国。本作のように韓国の風習を伝えることで深い溝が少しずつでも無くなっていくといいですね。
 本作は明恵の成長物語です。日本語を話せる人がどんどん周囲に出て来るあたりなど、少々上手く行きすぎな感は否めません。それでも習慣の違いに困惑しつつ成長して行く明恵の姿は好ましく、一般的(稼動かはわかりませんが)な下宿先の韓国人たちも好ましく描かれていました。
 少しナルシスト風の外見が気になるものの、松岡圭祐の取材能力やストーリィ・テラとしての能力はとても高く、どの物語にも一貫した主張が見られます。それは、”人はいつでも変わることができる存在であり、そのきっかけを受け入れられるかどうかは自分しだいである”と言うこと。「催眠」シリィズも好きですが、本作も楽しめました。次回作にも期待ですね。