日本橋ヨヲコ G戦場ヘヴンズドア 1巻

G戦場ヘヴンズドア 1集 (IKKI COMICS)

G戦場ヘヴンズドア 1集 (IKKI COMICS)





 堺田町蔵は父親が売れっ子漫画家の高校生。父親に対する自意識が過剰なため、漫画に対して拒絶反応を示す。自身は創作の形態として小説を選ぶが、親の七光りであると評価されることを恐れて未だ誰かの批評を受けようとはしない。もう一人の主人公である長谷川鉄男は幼いころから漫画を書き続けてきたが、あることをきっかけに漫画が書けなくなる。町蔵と鉄男が互いの作品に触れ合った時、閉塞していた道が拓けはじめる。だがそれは生半可な道ではなく、茨の道であることは疑いようも無く・・・。
 町蔵の父親、坂井大蔵は本気で漫画を書いています。それを見ながら漫画に対する偏見を抱いてしまうのは身内だからこその視野の狭さによるのでしょうか。無気力で、現状の利得に囚われた大人が(現実では)多いかもしれませんが、作中の登場人物は自らの仕事に誇りを持っており、それがとても良く伝わってきます。町蔵が同じ世界に足を踏み入れた時、父親の仕事に対する尊厳と彼がなしてきたことの大きさを知るのかもしれません。
 鉄男は外見が小柄で、おとなしいけれどその内では無限の言葉が渦巻き、無限のストーリィが紡がれていることが短い話からでも窺えます。おとなしく見せていても周りに伝わるものがあるのでしょう。鉄男の周囲の人間(友人や先生、近隣の知人など)が彼を認めていることがとてもうれしい。現実ではこういったタイプの少年は潰されやすい。そんな風に感じてしまうから、鉄男の周囲の暖かさにほっとしてしまいます。
 所詮は漫画だ、と言う人は他の媒体ならかまわないとでも言うのでしょうか。そういう人は漫画を見下しているつもりかもしれませんが、自分の創作物に対する狭量さを自ら露見しているようで、逆に可哀想に思えてしまいます。
 小説や映画など他の表現方法に比べて漫画の評価は低いでしょう。それでも、漫画を描こうとする人口が多くなってきたためか、質も内容も向上してきたように感じます。反面駄作と呼ばれても仕方が無い作品も多いのですが、それは裾野が広がったことによる必然で、山のようにある作品の中から本作のように熱く、人に何かを訴えかける作品を読むことが出来たことを幸せに思います。
 3巻まとめて購入しましたが、1巻を読んだ時点でこれを一気に読んでしまうのはもったいないと思ったので1冊ずつ読む予定です。楽しみが増えました。