[読了]うえお久光 「シフト」
- 作者: うえお久光
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/07/10
- メディア: 単行本
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現実世界に平行して存在する異世界。眠ることでそちらの世界に「シフト」するのはなぜか中高生のみ。「シフト」する際に聞こえるのは”世界はクリアを待っている”という声。この意味するところは一体何なのか?
悪魔のミカタでデビューしたうえお久光の初シリーズ外作品。世界構成の説明が上手で、入り込みやすいです。このボリュームでは途中までに出てきた疑問点や伏線を回収できないだろうな、と思いましたが、やはり続編がありそうです。どれだけ長くなってもかまわないのですが、きちんとゴールを見据えているのかな?と少し心配。RPGに馴染んだ世代には受け入れやすい設定だと思います。それほど頻繁に発行されないのではないかという懸念もありますが、次回作以降も楽しみにしています。ひとつだけ困るのは、この版型はやめてほしかったです。海外ファンタジィ物を意識したのでしょうか(ダレン・シャンとか)。この大きさは本棚にも入れ辛いし、価格が上がるだけなのでは?
現在乗っている男性作家の短編集。デザインが素敵です。表紙が文字の切り抜きで、購入するときに恐れていたのですが帰ってきて開封すると予想通り折れていました。それでも本屋さんの店員ですか?予想はしていたもののショックです。あと、各話の表紙がパステルカラになっていてそれもまた良いかと。全体的に佳作だったと思います。以下、各作品について簡単な感想です。
- 伊坂幸太郎「透明ポ−ラーベア」
恋に破れると旅に出る僕の姉。回数を重ねるごとに距離が長くなっていくのはなぜ?ホッキョクグマをこよなく愛する姉が最後に向かった先は。姉の最後の彼氏である富樫さんと動物園で偶然再会した僕は姉に思いを馳せる。
どんな短編集でも伊坂幸太郎であることがわかる、洒脱な文章はさすが。千穂という女性の”軽やかな強引さ”が良かったです。読後感もさわやかです。
- 石田衣良「魔法のボタン」
これもまた、石田衣良らしい文章です。都会の空気が描かれていて、会話もスタイリッシュです。あまりにも遠い世界で、少し現実感がないのもまた良し。漫画家のわたせせいぞうさんをイメージしてしまいます。
- 市川拓司「卒業写真」
まだ、文章からは市川拓司らしさというのは読み取れませんが(読み手の問題)、少し大人の甘い甘い物語。こういう話は・・・大好きなのです。物語の中でくらい良いではないですか。ね?
- 中田永一「百瀬、こっちを向いて」
この方は初めて読む作家でしたが、作品はかなり良かったです。思春期の自意識過剰気味なところや、少しうえの先輩がとても大きく見えるところが描かれていたと思います。少し神林先輩が大人すぎたかな?
- 中村航「突き抜けろ」
もともと長編作家ではない人ですね。主人公の恋愛物語と思わせて実は脇の坂本のお話。消化不良気味でした。
別れを予感してしまったのはいつだったのか。それを理由にあまりにたくさんのことを見逃してきたのではないだろうか。離婚を前提に最後の食事を迎える一組の男女。不器用な男が、有能だけれど不器用な女と結ばれて、今、別れのときが迫る。
男女を問わず、不器用な人が一生懸命な様子は愛らしいですね。もちろん男女関係では、ということで、仕事で不器用さをアピールされると困りますが。別れを前に淡々としていた彼女が精一杯の気持ちを込めた行動に彼が気づいたとき、どきっとしてしまいました。「百瀬〜」もそうですが、この後どうなるんだろう?それを想像するのもまた楽しみの一つでした。