よしながふみ フラワー オブ ライフ 1-3巻

フラワー・オブ・ライフ (1) (ウィングス・コミックス)フラワー・オブ・ライフ (2) (Wings comics)フラワー・オブ・ライフ (3) (ウィングス・コミックス)
 白血病の治療のため一年と一ヶ月遅れで入学してきた花園春太郎。春太郎はざっくばらんな性格で、本来ならこの年齢での一歳差は大きいものの、対等な付き合いを求める。入院中退屈を紛らわせるためにはじめた漫画だったが、同じ趣味を持つ同士が集まった漫画研究会には、偶然同じクラスの人間が集まっていた。と言っても春太郎を含めわずか3人の研究会で、わが道を行く真島とはなかなか相容れないものの、もう一人の部員である三国とはすぐに仲良くなる……。
 これ、面白い!面白すぎます。なんとなく買ったのですが、それぞれのキャラに個性があって、すぐにせりふだけでも誰が話しているのかわかるほどです。春太郎はまだ、自らの身に降りかかったことを自覚していないようですが、それは彼が学生の頃を描いているこの作品では自覚できないままかもしれません。父親や姉が、口は悪いものの愛情を注いでいることが解り、姉には春太郎の病気以外に何らかの理由があるように思えますがその陰を感じさせない性格がとても好ましい。
 同級生もそれぞれに個性があり、特に真島が面白い。本当にわが道を行く性格で、中学時代に軽いいじめにあっていたこともさもありなんという感じですが、そのことすら気に留めません。何を間違ったか、容姿は非常に秀でたものがあり、彼自身もそれを自覚しているのですが、恋心に乏しいためあまり恋愛には発展しません。彼は要所要所でものすごく面白い面を見せてくれるのですが、特に面白かったのが2巻の学園祭での出来事でした。プライスレスな贈り物のため意に沿わない役者を引き受けた真島ですが、その贈り物がとにかく爆笑ものでした。お金に意地汚い性格は友人ができないかもしれませんが、同級生も高校生ともなればいじめようとしないのか、それともこのクラスの人間が優しいのか。まだ、”萌え”とか”属性”とかでしか考えることができない真島ですが、将来はきちんと恋愛できるのでしょうか。ドSな真島と、Mな滋の組み合わせはある意味ベストなのかもしれません。あまりどろどろした展開は想像しにくいのですが、これからどうなるのか楽しみです。
 もう一人、好ましい人物がいて、それは、クラス委員長の山根さん。彼女は年齢に似合わぬ大人っぷりで、それがあまり無理をしている様子がないあたりがとても好ましい。このキャラクタはなんとなくどこかで見たことがあるな、と思っていたのですが、「神戸在住」に出てきてもおかしくないキャラクタだな、と感じていたようです。一人シンプルな顔に描かれていることと、本が好きなことがそう思った理由ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 今、スペインに出張中という母親もいいキャラクタをしていそうな予感がしており、早く登場してくれないのかと待ち遠しいです。まだ3巻がでたばかりで、おそらく一年後ぐらいまでは続巻は出ないのでしょうが、とても楽しみです。でもどうやら次で終わりらしいです。本当に面白いので残念といえば残念ですが、物語を終えることができるのは創作家として大切なことだと思います。何度も読み返しました。ドラマCDも買おうかと思っているところ。やはりあのせりふを肉声で聞きたいと思うのではないでしょうか。傑作。