さそうあきら コドモのコドモ 全3巻
おてんば少女春菜は幼馴染のヒロユキと性行為の真似事をした。もちろん、その結果がどうなるかなんて想像もせずに。その結果、春菜は妊娠してしまう。しばらくは気がつかない春菜だが、日に日に変わり行く自分の体から妊娠したことを知る。春菜のクラスの担任は理想主義だから、現実のコドモたちはついてこずに、学級崩壊が進む。授業を受けなくてもクラスの仲間同士の結束は固い。果たして春菜は子供を生むことが出来るのか・・・。
さそうあきらさんは子供の純真さや無邪気さによる残酷さを書くのが非常に上手い作家だと思います。実際にはこの物語のように上手く話が進むことは殆ど無いでしょう。でも、ありえないシチュエーションでもリアリティを感じさせる描写力はさすがだと思います。
まだ春菜は小学生であり、親の庇護を受けるのが当たり前の、自分自身がコドモであるといっても良い年齢です。そんな春菜が妊娠して、子供を産み、愛情を注ぐことが出来るのか、というのが本作の主題のひとつでした。自分が妊娠したことの影響を想像することも出来ない春菜だけど、親が自分に対して注ぐ愛情を感じ、自分自身も親に愛情を感じていたからこそ、まだ見ぬ自分の子供にも愛情を注ぐことが出来たのかもしれません。
子供たちが自分の周囲のコミュニティを守るための結束力も現実味を持って描かれていました。実際は田舎と言う狭く限られたメンバでの社会ではもっと強烈な偏見や迫害があるのかもしれません。ラストは、子供たちだけでは不可能と思えるようなことを見事にこなし、少し理想的に過ぎだったかもしれませんが、教育とは、出産とは、命とは何かと言う大きな命題に対するさそうあきらさんの考えが全3巻と言う短いストーリィの中に見事にまとめられていたと思います。