[読了]岡崎裕信 滅びのマヤウェル





 高校一年生の倉持ユーキは通学中の電車でのっぺらぼうに出会う。その後、学校に乗り込んでkた自称のっぺらぼうの少女、真綾は、これまでユーキが隠してきた秘密をあっさり看破する。秘密の隠蔽を条件にユーキとともに生活を始める真綾。真綾の言動は虚言癖のある子供にしか思えなかったが・・・。
 第4回スーパーダッシュ小説新人賞受賞作。テンポの良い会話が面白い作品でした。「〜じゃ」と言う話し方をする人とであったことは無いのですが、本当にいるのでしょうか?これは「老人」とか「伝統のある家系で育った」という記号なのでしょうね。「戦う司書と恋する爆弾」が設定の妙で受賞したとすれば、本作は会話の面白さが評価されたのではないかと思います。逆に言えば、設定に独自性はあまり感じられないともいえますが。
 以下、内容に触れますので隠します。

 主人公のユーキが隠してきた秘密と言うのは読者からすればあっさりとわかってしまいます。「トリックスターズ」でも判るようにイラストの影響が大きいのはライトノベルの弱点でしょうか。
 物語の前半がどたばたコメディであるのに対して、後半は比較的シリアスな展開です。真綾が最強設定なので負ける可能性が殆どなかったのが残念といえば残念。能力の関係は「ハイスクール・オーラバスター」でいう忍と亮介のような物ですが、真綾が超然としていないところやユーキが自覚していない点が異なります。”最強ゆえの孤独”を描くためにはもう少し周囲との距離をとらなければいけません。「ハイスクール〜」は長編なので詳細な描写が可能な分、有利かもしれませんが、やはり筆力の違いを感じます。設定が似ていても、もっと言えば同じでもかまわないと思います。ただし、その場合は既刊を越える何かが必要ですね。
 とはいえ、会話の面白さは才能だと思いますので、今後設定を生かした作品を書いていただければ、と思います。出来れば続編ではなく、新しい物語を書いてほしいですね。