[読了] 山形石雄 戦う司書と恋する爆弾

戦う司書と恋する爆弾 BOOK1(集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と恋する爆弾 BOOK1(集英社スーパーダッシュ文庫)




 胸に爆弾を埋め込まれた少年コリオはそれまでの記憶を失い、ハミュッツ=メセタを殺せという言葉のみが残る。自分は爆弾であって人ではない、そう思い込むことで死への恐怖を押さえ込んできたコリオ。最強の司書と呼ばれるハミュッツ=メセタを殺せと指示した黒幕は、そしてコリオは人として生きることが出来るのか・・・。
 第4回スーパーダッシュ小説新人賞を受賞した作品です。人が亡くなるとその記憶が本と言う形態になるという世界。ここでの”本”は水晶のような結晶になっているのでしょうか。この設定はとても面白く、物語の根幹となるものですが、時折、辞典や小説などの言葉が見られました。人の人生が”本”と言う形になる以外にも”本”を作ることが出来るのでしょうか。ううう、気になります。
 それはともかく、大きな流れとしては十分面白い作品でした。あら捜しをすればあちこち穴が見つかりますが、今後改善していけばよいかと思います。「追憶の戦器」などまだ明らかになっていないものがたくさんあったので次回作もきっとあるのでしょう(もちろん投稿内容は知りませんが、改稿したのは次回以降に繋がる伏線部分であるような印象を受けました)。
 文句ではないのですが、改善したほうがいいと思える点など少しだけ。内容に少しだけ触れますので隠します。
 まず、話の流れに大きくかかわっている人物の描写が少なすぎます。なぜ、猫色の姫が彼らに焦点を当てたのかが判りません。舞台となる町で生活していたからかもしれませんが、他の誰かでも良かったような気もします(猫色の姫の能力によるものかもしれませんが)。
 次に、この物語では××が決定していることになります。それが作品の面白さの基盤となっているのですが、それまで直接関係の無いとことで生きてきた人たちの尊厳を奪いかねません。
 そして何よりタイトルです。購入した時は「戦う司書 恋する爆弾」だと思っていました。このときは、”「と」が入ったら台無しだったかも”なんて思っていたのですが、章タイトルを見て、蜘蛛が「と」になっていると判った時のあの衝撃(というほどでもありませんが)。タイトルに「と」が無かったら評価は3割増しでした。