[読了] 川島誠 夏のこどもたち夏のこどもたち (角川文庫)作者: 川島誠出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/06/25メディア: 文庫 クリック: 18回この商品を含むブログ (57件) を見る



 子供の日常を描くことにかけて多大な才能を示す川島誠の短編集。少しずつですが、各作品にコメントを。
 -笑われたい
 微妙な力関係がそのまま形となって現れる中学生時代。ケンジは笑われ役に徹することで自分の立ち位置を示す。自らを囃し立てることで標的から逃れようとするケンジ。こどもは、残酷です。
 -インステップ
 幼いころはほんの小さな差が大きくなって現れます。数ヶ月早く生まれただけで発育に差が出てしまい、それはスポーツに顕著に出てきます。高井雅弘はあることに気がつきます。それは立派な進歩であり、たとえ体格では及ばなくても精神的に一歩リードできたのかもしれません。
 -バトン・パス
 短距離が特別早いわけでもないのに僕は選手に選ばれた・・・。運動会のほんの一コマ。とても短い話ですが、こどもの成長する瞬間を描いた秀作です。
 -夏のこどもたち
 優等生の朽木元には左目が無い。だからといって世を拗ねるわけでもなく、クールに自分の周りの世界を見つめています。中身が無いのに大きくなる眼窩は成長しつつある精神と周りの世界とのずれを表しているのかも知れません。甘えたくても甘えられないのは両親がまだ子供だから。元は精神的にはもう大人です。それでも無理をしている感じは無く、クールに恋をして、物事に柔軟に対応できる元は格好良いですね。