[読了]正木秀尚 ガンダルヴァ

ガンダルヴァ 上 (九龍COMICS)ガンダルヴァ 下 (九龍COMICS)



  ガンダルヴァとはインドの神で、和名でいえば乾闥婆明王)のこと。香りの神であり、音楽に携わる神だといわれています。神の鼻を持つ香田は、残り香から持ち主(?)の存在を感じ取ることが出来、まさにガンダルヴァの化身とも言える存在。他の登場人物も香りに縁のある人物たちがそろっており、たとえば、強烈な腋臭を持つ女性、記憶に伴い体臭まで若返ってしまう女性、造り酒屋の女性主人などなど。これは香りに興味があるゆえに、サンダルウッドの体臭を持つ香田に惹かれる彼女たちと至上の香りを求める香田の物語。
 これまで香りがメインとなる物語としてパトリック・ジュースキントの「香水」を読んだことがあります。そこでの登場人物も香田のように体臭から相手の状態を嗅ぎ分けることが出来ますが、あちらは香りで人を支配できると言う設定でした。ガンダルヴァでは相手を支配するとまでは行かないまでも、香りが持つ影響を鮮明に漫画と言う題材で示しており、その描写力はまるでその香りが漂ってくるかのようです。香りが妖精のような形で表現されているのも良いですね。
上條敦士チルドレンである正木秀尚の画力は圧倒的で、どうして人気があまり出ないのか良くわからないくらいです。実はこの作品は以前出版されたものを所有していたのですが、今回改めて上下巻として発売されました。そのため既知の作品も有りましたが、購入してよかったと思います。執筆ペースがあまり速くないのも師匠の影響でしょうか。丁寧に書き込んである画風は好みですので、今後の作品にも期待しています。