実力はあるけれど、人との接し方がわからない主人公と、誤解を重ねながらも良い関係を築こうとする周りの人間のやり取りが面白い作品。ここまでの誤解があるかな、との疑問はありつつ、ぶっきらぼうな職人など、他人と話したがらない人は結構いるので、ちょっと大げさにするとこういう感じになるのだろう。どうでもいい人と話さなくてもいい世界ってうらやましいかも。とはいえ、そうなるためには、積極的にコミュニケーションをとらなくても許される圧倒的な実力が求められるので、木っ端社会人としては、いやいやながらもコミュニケーションは欠かせないのは同じことか。
2巻ぐらいで、母親が登場するのかな、と思いながら読んでいたけれど、3巻まで読み終わっても、思い出以外には出てこない。ラスボス的に登場するのかな。意外と現代の倫理観に近いのか、と思わせつつ、身内が一番大事であることを思い知らせる事件があった。もちろん、現在でも、自分の身近な人が第一であることに変わりはない。ただ、命は平等なのだ、と建前でも言い始めて、それを言い続けることは大切なことだ。そう思っていたし、今でもそう思ってはいるのだけど、最近の世界情勢を見ると、建前を維持するのにも力が必要なのだな、と感じる。関係の遠い人の命を軽視し始めると、すぐに影響を受けるのは力のない人たちだ。自分自身が、個人として力があるとは到底思えないけれど、幸運なことにそこそこ経済力がある(あった)国に生まれて、何とか仕事ができて給料を得ることができている時点で、だいぶ恵まれている。でも、誰かを助けるほどの力はない。ぎりぎりまで生活を削って誰かを助けるのも違うような気がするので、生活に支障がない程度に寄付をする程度だ。寄付をする文化があまりないのかもしれないし、わざわざ他人にいくら寄付したとか言わない(親にいったくらい)ので、もしかしたらみんなそこそこ寄付をしているのかもしれないけど、気軽に安心して寄付できるようになればいいなと思う。
主人公は世界でも上位の強さを持つようだし、精霊の力を得ているので、本格的に困ることは考えにくい。後は世界的な危機を解決してしまうくらいだろうか。あまり長く続けるような作品でもないかと思うので、あと数冊でうまくまとまることを期待している。