ショーン田中 願わくはこの手に幸福を

 

 

苦労をしても報われなかった冒険者が、知識と経験はそのままに、若いころに戻って、前回とは違う人生を進もうとする物語。個人的には、多少知識をもって若返ったとしても小賢しさが前面に出てあまりいいようには進まないのではないかと思うので、特に若いころに戻りたいとは思わない。普遍的なものはきっとあまり得ていないので、少し人生の傾向が変わってしまえばもう前の知識はそれほど生かせないのでは、とも思う。

物語の主人公は、自分をないがしろにした英雄たちと向き合うことで、彼ら彼女らの信頼を得ることになる。3巻まで読了して、そもそも前の人生でもそんなにないがしろにはされていなくて、英雄との差を感じて自虐的な受け止め方をしていたのではないだろうかと思った。

例えば、今の記憶を持ったまま昔に戻ったところで、特に選択肢は変わらないと思っていたのだけど、そのまま漫然と生きていたら今の自分になることが分かっているひとであれば、多少の無茶をしてでも何かを変えようとするかもしれない。特に、不完全燃焼のまま今の自分に至っていると感じているのなら、同じ人生を繰り返すよりは、何かしらの行動を起こすかもしれない。自分に当てはめると、今の自分にそれほど大きな不満があるわけではなく、独り身でいることが若干さみしくはあるものの、誰かと一緒にいたら楽しいのかと想像しても、とくに想像できない。誰か、というあいまいな想像では楽しくなれないかな。特定の人を想像してみても、きっとその人は今幸せにしているだろうから、あえてこちらに巻き込むのもいかがかとおもう。向こうにとっては楽しい記憶とは限らないし。お金は、もちろん有り余っているわけではないけれど、生きていくのに困るほど不足してはなく、何か欲しい高額のものがあるわけでもない。ただ、株とか金の価格が上がることは分かっているので、ちょっとした投資はするかもしれない(このエントリを書いたのは数年前)。若いころ楽しいことがあって、さかのぼることで同じように楽しめるとしても、他の面倒なことを繰り返すくらいなら、このまま老いて死んでいった方がいい。物語の主人公は、強い意志があって、成し遂げられなかったとことに立ち向かおうとしているけれど、そんな気力はない。ただ、体が若くなると考えも変わるかもしれない、とはおもう。