朝倉秋成 ノワール・レブナント

 

面白かった。キンドルで読んでいたので分量が今一つ想像できていなかったけど、結構多かったみたいだ。キンドルのパーセント表示は出たり消えたりして、今回はほとんど消えたままだった。設定で何とでもできるのだろうけど、調べる情熱がない。お風呂で読むと出たり消えたりするので、水滴が何かしていそうな気はする。防水とはいえ、水滴がつくと怒涛のページめくりが起きたり、ひたすら文字を選択したりするので、お風呂では基本的に濡らさないようにしているのだけど、濡れても大丈夫と思いながら扱うとどうしても濡れてしまう。さて、読後の感想としては、表紙の女性は誰なのだ、とか、不思議な現象は不思議なままなのね、とかあるのだけど、一番思ったのは、皆さん高校生なのに、初対面の人とちゃんとコミュニケーションが取れるのね、ということだ。自分が若いころだったら、と想像することにあまり意味はないけれど、自分が思っていることをきちんと言葉にできないだろうなとおもう。本の背をなぞったら中身を記憶できる少女は、その能力の応用ぶりがすごい。かなり優秀。予言を聞く少年は、きちんと考えることができるし、頭がいいと作中でも表現されているけれど、その通り頭がいい。ものを破壊できる少女は、判断基準が不安定で、その辺が少し危ういけれど、作品としてはそのバランスが良かった。幸福感の偏差値を見ることができる少年は、素直だしそれなりに観察力がある。

それぞれ特殊能力を得ているわけなのだけど、各自がその能力を試す期間がそこそこ長くあって、だからこそ本番でもちゃんと使えた。その期間を設けているのは、登場人物に感情移入する点でも、能力を理解する点でも良かった。

敵というか、立ち向かう相手がちょっと風変わりで、物語は一応きれいに閉じてはいるものの、これからも何かありそうな予感を残して終わったのも良かった。不思議な現象がまかり通る世界なので、その気になれば、数年後別の子供たちが能力を得て、今回の主人公たちがそれを見守る(サポートする)という話もできそうではある。時をかける少女的な流れで、目新しくはないかもしれないけど。

著者の作品は本作とフラッガーの方程式しか読んでいないけど、文体も内容も好きなほうなので、いろいろ読んでみようかとおもう。本作の幸福度が読める少年と、フラッガーの主人公は、性格としてはそこまで似ていないかもしれないけど、話し方というか行動に似たものがあるように感じる。だからどうというわけではなくて、著者が考える一般的な男子高校生像があるのなら、これらの少年たちに近いのかな、と少し思った。