佐々木とピーちゃん

いろんな世界観をごちゃまぜにしたらどうなるかを試しているような作品。現実と異世界を行き来し、現実の製品を異世界で高く売る、という流れは正直嫌いだ。主人公は、ヒトが移動するとウイルスを運ぶかもしれないなどと考えつつも平気で行き来するようになる。まあ、異世界と行き来できるようになる状況で、そういったことを深く考える人は実際にはいないのかもしれない。例えば、新型コロナウイルスを持ち込んだらどうなるのだろう。意外と交通網が発達していないから、ある程度の範囲で収まるかもしれないし、転移することで各地に広まるかもしれない。

話はテンポよく進み、現実と異世界を行き来するたびに何かしらの出来事が起きる。その問題を解決しようとすると、更に問題が出てくる、といった感じ。

ライトノベルでは、多少の騒動も政府が押さえ込んでしまうことがままあるのだけど、実際に可能だろうか。まあ、破壊された建物などを元通りにできるのであれば、見たひとの勘違いか、ねつ造と思われるだろうけど、余りにもそういうことが頻発したり、観測者が多い場合にはごまかせなくなるのでは、と思う。独裁国で、通信を管理できる状況であれば、可能と考える人はいて、そこそこ情報を制御できていたのだろうけど、どれだけ輝かしい盾があったとしても、それを回避する方法はあるようだ。

魔法=想像力とはどのあたりから広がってきたのだろう。異世界の人にはそれほど想像力がないのだろうか。それとも、アニメや映画での効果を参考に想像しているから、現代人は魔法の効果を想像しやすいと考えているのだろうか。うっかり核爆発をイメージしてしまう、うかつな人もきっといるだろうに、そういう人は物語にはいない。うっかり死んでしまっているので、物語にはでてこないのかもしれないが。

見た目と能力の違いを大きくするとき、多くは子供の見た目だけど大人以上の能力を持つことが多い。見た目は老人だけど力持ち、とかもたまにあるか。ハンターハンターとか。見た目が老人で魔法の扱いに優れていても、妥当と考えるのだろうか。知識による力、もしくは筋力に頼らない力は、年をとっても変わらないと考えるのかもしれない。話は少しそれるけど、年を取って自由な時間ができればやりたいことがあったとしても、年を取るまで待っていてはいけない、といった意見を見た。確かにその通りで、若いころに比べて、集中できる時間が短くなってきている。良し悪しは別として、子供のころは本を一冊読み終わるまで飲まず食わずということも良くあったけど、今となっては23時間で疲れてしまう。また、きちんと読むようになったこともあるのだろうけど、読む速度も遅くなった。言葉を想像に展開するのに時間がかかっていると感じる。悪いことばかりではなく、子供のころは詳細が想像できなかったものについても想像するようになったからだとおもう。その方がきっとよりその世界を楽しめるし、作者の想像している世界に近づいているような気がする。

主人公は全くの善人ではないし、悪人でもない。著者が想像する読者像に近いのかな、と感じる。大それたことは望まないけど、働かずにおいしいものを食べるくらいのことは望むようだ。性的にはがつがつしておらず、子供に手を出さない理性はある。でも、大量に人が死んでも、画面の向こうの出来事のような感情の処理をする。なかなかに怖い。あまり内容に触れないように書いているつもりだけど、初期に文鳥となしたことについて、その世界にいる人と交流を持つようになっても何も思い返さないことが怖い。主人公の細かな感情の揺れを書く余裕はないのかもしれないけど、そもそもあまり大きな感情の変化はないように見える。想像の中で異世界に行ったときにこういう行動をとりそうだけど、実際に、強烈な敵意を向けられたときに、淡々とできるだろうか。そんなに精神力が強いのであれば、現実社会(作中のではなくいま僕が生きている世界)でももっと図太く生きられるよな、とおもう。

どこかで見たようなキャラクタが多いけれど、処理がうまいし、とても読みやすい。4巻までまとめて買ったけど、一気に読めた。終着点を考えているのかいないのかはわからないけど、過程を楽しむ作品だと思うので、今後も期待。