日向夏 女衒屋グエン

 

薬屋のひとりごと、で有名な日向夏の作品。舞台はどの程度重なっているのかわからないけれど、中世中国に近い世界。科挙とかがあるのでそのものをイメージしているのかも。醜い部分はあまり書かないようにしていたな、と感じた。性病のことはほとんど触れられないし、堕胎については記載があったものの、長年この仕事をしていると避けられない、という程度だ。前者は、この時代(感)であれば感染は避けがたいだろうし、後者は、下手をすると命を落としていただろうに、とおもう。駆け引きのようなものもあったけど、比較的悪役が素直なので、騙しあいのような展開もあまりなかった。ここまであまりいいことを書いていないのだけど、全体として話は面白かった。青少年向けかな、とおもう。

物語では、絶世の美女が実は男性だったという話があるけれど、実際にそんなことはあるのだろうか。世界びっくりニュース的な番組で、結婚相手が実は男性であったことに気が付かなかったという話は見たことがあるので、性別をごまかす程度は可能かもしれない。ただ、群を抜いた美女となると、なかなか厳しいのではないかと思う。反対に、王子と思っていたら実は女性だった、との物語もある。こちらも現実には厳しそう。ただ、今と異なりお風呂に一緒に入る機会もなかっただろうから、身体面ではごまかしがきいたのかもしれない。声も、話す機会を極力減らせばごまかしやすいかもしれない。

 

女性らしさ、男性らしさとは何だろう。こういう春をひさぐところでは、いわゆる女性らしさが求められているのだろうけど、その女性らしさとは、お金を払う人が望む女性らしさだ。女性が望む女性らしさは、多少男性にとって都合のいいものから外れているかもしれないけれど、おおもとは同じなように思える。最近は、性はグラデーションだと考えるようだ。平均すると(何を平均?と言い出すとややこしいので、ざっくりとY染色体の有無ぐらいで考えると)身体的な違いはあるだろう。女性のほうが背が低く、体重が軽く、声が高い。そういった特徴を持つ男性もいるだろう。こういった、女性らしさ(と便宜上書く)を強調するのは、少し前の時代を設定した作品や、前自体的な価値観を持つ国として描かれたときに限られるのかな。差別は良くないけれど、差別がある(あった)世界を描くことは悪ではないと思うので、これからも架空の世界ではいろんなものを描いてほしい。