米澤穂信 いまさら翼といわれても
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/11/30
- メディア: 単行本
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奉太郎がやらなくていいことはやらない、やらなければいけないことは手短に、と考える(主張する)ようになったきっかけが面白い。これは意外とよくある話なのかもしれない。内容を書いてしまうと面白くないけど、書かずに説明するのも難しいので、ここでは書かないでおこう。奉太郎も大概だけど、お姉さんの洞察力はさらにすごい、というより何かを超越している感が否めない。ちょっとこわい。奉太郎ほど能力があるわけではなく、性格も全然違うけど、彼の気持ちはわからないではない。信条としては「人が楽しそうにしていることは、少なくとも一度は挑戦する、体質的にできないことには手を出さない」を挙げている(まわりには特に言っていない)。よほど不可能でなければ試してみるけど、一人ではできないことは手を出さないので、座右の銘とまではいかない。信条ともいえないか。行動指針、ぐらいかな。何であれ、自分の中でルールを決めてしまうと、生きやすい気がする。こういうのはある種の発達障害といわれそうだけど、何でもかんでも疾患にしてしまう風潮は好きではない。個人の性質ではだめなのだろうか。
タイトルにもなった「いまさら翼といわれても」では、えるの意外な一面が見える。何か制限されることで、逆に広がりを持つことはよくあることだ。何度か書いているけれど、バレエでは、動きが限られるからこそ表現の幅が広がるという。えるの自由さや芯の強さをもたらしていたものを考えると、それが変化することで、失われるものがあるのかもしれない。えるを制限していたものの重さは正直想像できていないだろうし、感じることもできない。年よりは若さに幻想を持ってしまいがちなことは、重々理解しているのだけど、(集団の傾向として)若者の柔軟性は老人とは比べ物にならないだろうし、まだまだ変わることができるのではないだろうか。彼らはまだ高校2年生で、卒業までは書いてくれるとどこかで見たような記憶がある。古典部がどうなるのか、彼らの進路はどうなるのか、見届けたい。