中山七里 さよならドビュッシー

さよならドビュッシー

帯には大森望さんの推薦文らしきものがありましたが、総評の中の一部です。まあ、嘘ではないのでありなのでしょうか。それはともかく、その推薦に相応する面白さでした。ちょっと強引な設定があります。これは何のためにあった前振りなのかなあ、と思うころに引っかかる記述があって、そこから想像すると全体像は分かってしまいます。ただ、リーダビリティは高く、するすると読み進めることができるので、エンタテインメントとしては優れている作品です。直接似ているわけではありませんが、「禁断のパンダ」に似ている気がしました。このミスシリーズは文庫になるのが早いので、文庫化されてからで十分だとおもいます。
評者は触れていませんでしたが、登場人物の怪我についてすこし。あまり書くとネタばれになってしまうので控えめに書くと、いくら奇跡とはいってもそんな風には治らないだろう、と思ってしまいます。もちろん、治らなければいいと思っているわけではなくて、あまりにも非現実な話になっていったのが少し残念。それとも､最初の方で怪我の具合を読み違えたのでしょうか。むー。
出版されるときにつけられるジャンルとか、帯の文句で読み方がだいぶ変わってしまいます。ミステリと銘打ってあれば、犯人は誰かと思ってしまうし、ファンタジィと書いてあれば多少の矛盾は受け入れてしまう。そういう読み方が良いとも思えないのですが、最近はそういう読み方をしてしまいます。今回で言えば、「このミス大賞」という背景を知りつつ読んでいたので、犯人は誰かとか、きっとトリックが有るに違いないとか思いながら読んでしまったので、少し感覚的な部分を楽しみきれなかった気がします。
とはいっても、基本的には本を読むときにはだまされたい方なので、単純に読むことも多いのですが。ライトノベルでときどきみられる、かなり強引な力技を出されるとちょっとげんなりするので、さすがにそれはやめて欲しいかも。