[読了] 三崎亜紀 廃墟建築士

廃墟建築士

廃墟建築士

ダヴィンチで絶賛していたのが読むきっかけ。確かにおもしろかったけど、どこまで科学が進歩していて、どこまでわかっていないのかが今ひとつ理解し切れなかったのでそれほど入り込めなかった。わからないことを際立たせるにはわかることをもっと詳しく書かないと、とはおもうものの短編ではこれくらいがベストのようにもおもえます。全体的にあまり音を想像させない小説でした。それが悪いといっているのではなく、静謐さを感じることができてよかった。そこはかとなく希望と絶望、未来などについて考えることを促す部分があって、そこも良かった。
 わからないことがあってもいいのだけれど、何かを伝えるためには共通の言葉を持つ必要があります。感覚的なことは伝えたとおもっても伝わっていなかったりその逆もあったりします。もちろん、最終的には感覚に頼る伝え方も多いだろうけど、それにしても言葉を伴った方が確実だし良いようにおもう。あ、あくまでも技術とか物語とかの話。感情は逆に言葉にすることで失われてしまう部分もあるし、難しい。そういう意味では、この物語は感情ではかかわりにくい事象に感情的に迫った作品だったと言えます。わからないものをわかろうとすることが尊いのかもしれません。