恩田陸 訪問者

訪問者

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 これは恩田陸さんの真骨頂とも言える内容でした。会話の妙も良かったし、これからどうなるのだろうという楽しみも盛りだくさんでした。しかしまあ、連載作品なのに完結するまで二年ぐらいかかっているみたいで、連載中に読んでいた人はやきもきしたことでしょう。
 たいした人生でもないのでとくに暴かれると困る事実もないのですが、恩田作品ではそれぞれがあまり表に出したくないものを抱えていることが多い。もちろんごく個人的なことはおおっぴらにする必要は無いのですが、登場人物は何かの事件にかかわっていたり、誰かが隠していた事実を知ってしまっていたりします。今までの何もない人生を後悔しているわけではありませんが、物語にするためにはそういった陰があるほうがおもしろい。うーん、まったく、自叙伝すらかけない人生だな、とおもいます。今回の登場人物はご年配の方が多かったのですが、最後の落ちというか、関係性が良かったです。あまり書いてしまうとおもしろくないのでこの辺で。