ジェフリー・ディーヴァー 魔術師

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈下〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈下〉 (文春文庫)

おもしろかった。おもしろかったけど、ウォッチメイカーを先に読んでいたのでインパクトは弱かったかもしれません。手品ってだいたいの種は想像できるのに毎回毎回だまされてしまう。それが楽しくてみているのだけど、今回はその手品の手法を犯罪に取り入れていました。以前千里眼シリーズを書いている松岡さんが似たような主題の作品を出していたとおもいます。松岡さんの方はちょっと具体的に書いていたけど、どちらが良いというものでもありません。これからも気持ちよくだまされたい(手品)ので、あまり種は知らないほうがいいとおもうのですが、知っておいたほうが、それを応用した犯罪に引っかかりにくくなるかもしれません。
 リンカーン・ライムが危機に直面する場面があって、ただでさえ体が不自由なのにさらに感覚を奪われる恐怖を与えられます。これは、想像しているに過ぎないのですが本当に怖い。今は(平均と比べるとだいぶ鈍感だと自覚しているけれど)五感がそろっています。何かひとつを失うだけでも怖いのに、残された機能でがんばっている状態からさらに失うというのは怖い。たぶん、想像はしているけれど現実はさらに恐ろしいでしょう。それでも気丈なライムは格好いい。
 もうたぶん、前の作品をさかのぼって読むことはないかな、とおもうのですが、新しい作品が出たら手を伸ばしそうなシリーズです。