道尾秀介 ラットマン

ラットマン

ラットマン

ラットマンと言うのは同じ絵を見たとき、前後の認識によって見え方が異なると言うものだそうです。もう少し詳しく書くと、動物の絵に並んでいるときはラットに見えるけど、人の絵に並んで見たときは人に見えるイラストがあるという話。これがどのように話に絡むかはおいておくとして、「ラットマン」とは同じものを見ていたとしても前提(その人の経験)によって見え方が違ったりすることがあるということです。これって結構重要なことで、世にある多くの諍いは見え方が違うから起きているのでは、とか考えてしまいます。目指す場所は同じはずなのに、求めているものは同じなのに争ってしまうことがあって、第三者から見たらそれは明らかなことでも、当事者には見えていなかったり。っと、あまり大きな視点で考えても仕方が無いので、もっと視野を狭めて考えると、誰かが求めているものとか、聞いてみたらはっきりすることでもはっきりさせるのが怖かったり、聞くこと自体に抵抗があったりでなかなかできないことも多い。まあ、聞かれても自分が何を望んでいるのか分からないときも有るし、そのとき出した答えがいつまでも同じかどうかも分からないし、難しいものです。大切な人だから踏み込んではいけない領域が有る、と躊躇してしまうのかも。
作品自体は、こういった思いやる気持ちがあったり卑怯さがあったりで面白く読めました。