有川浩 別冊図書館戦争?

別冊 図書館戦争〈2〉

別冊 図書館戦争〈2〉

 相変わらずの甘いお話です。まじめな話もいいのですが、この作者はラブコメとか、恋愛ものを書いたほうがあっているような気もします。もちろん、今回はこれまで築いてきたキャラクタあっての楽しみ方ですし、物語字体も楽しく書ける人だと思います。

  • 「もしもタイムマシンがあったら」

 緒方と進藤の話。緒方は学生のころはそれほど深く物事を考えるたちではなかったようですが、ある人物との出会いで変わります。学生のころってあまり物事を考えないかもしれません。将来に対する漠然とした不安があるのはあるのですけど。だから、しっかりした考えを持った人が魅力的に見えるときと、自分と同じように軽い人に惹かれるときがあるのかな。モラトリアムは今はあまり無いのかもしれないけど、どっちつかずのあのころも大切な時間です。タイムマシンがあったらどの時代に戻りたいでしょうか。

  • 「昔の話を聞かせて」

 堂上も昔からできた人物ではない、と言う話。しっかりした大人って意外と周りにもたくさんいるものですが、彼らの過去を聞いてみたい気もします。自分がした失敗を後輩にさせたくない、との思いは誰にでもあるのかもしれませんが、体験しないと実感できないこともたくさんあって、うまくいかないなあ、と思うことも。それでも大きな失敗を繰り返さないことで人はここまできたのだろうと思います。

 手塚と麻子の物語。麻子はしっかりしているけれど、一面ではとてもかわいらしいところがあります。そんな人はきっとたくさんいるのでしょうが、そこに気がついてくれる人がいるかどうかは大きい。終盤で麻子が手塚に言ったせりふは、本当にかわいい。ストーカっている人にはいるのでしょう。周りで聞くこともあまり無いのですがおおっぴらにしないだけかも。
 大切なものに気がつくのは、どれだけ遅くても気がついたほうがいいとは思う。でも、大切なものを大切にできるのはとても幸せなことなのでしょう。今まで遅すぎたことが多いのでこれからは、と言いたいところですが遅きに失するのかも。あなたに大切なものがあるならば、それを大切にできることはとても幸運なことです。遠くから眺めることしかできないこともあるし、触れられないこともある。

 本当に面白い作品でした。一気に読めてしまうのも面白いからでしょう。シリーズはこれで完結のようですが、大団円とは言わなくてもきれいにまとまった作品でした。次回作にも期待大。